寺田寅彦の慧眼に感服した

千葉県を中心に依然として停電と断水が続いている。
東京新聞Web版の記事を引用する。
台風15号による千葉県の広域停電は、16日で発生から1週間となった。県内では同日未明時点で約10万戸が停電。電気が復旧した地域では、漏電などによる「通電火災」が起きる恐れがあり、東京電力や消防が注意を呼び掛けた。
 
さらに次のようにも報じている。
台風15号が関東地方を直撃して1週間。停電のため、千葉県では依然として、南部を中心に11市町で断水が続く。15日午後4時現在で約2万戸にも上り、市民生活への影響は深刻さを増している。断水が長引く自治体関係者からは「こんなに長引く停電は想定外」との声が上がるが、もともと浄水場などの水道設備の非常用電源の数が少なかったり、燃料の備蓄が少なかったり。コスト面などから災害時の備えが進まない現状が浮き彫りになった。


寺田寅彦はその著『天災と国防』(講談社学術文庫)のなかで
文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増すという事実である。

そして、国中に電線やパイプ、交通網が張り巡らされたありさまは「高等動物の神経や血管と同様である。その一カ所が故障すれば影響は全体に波及するのだ。と述べている。

倒木や土砂崩れなどがあちこちで発生しており、被害実態すら明確に把握できていないという。
これが21世紀の東京から50キロ圏内での出来事なのかと信じられない思いに駆られる。

先の書は3.11の直後に購入し、あちこちのページに付箋をつけた。
今あらためて読み直してみると、寺田の先見の明、慧眼に感服すること大である。

初出が1934年(昭和9)11月とある。
その証拠にこの論文は「青空文庫」で読むこともできるのである。
この書の最終段落は次のように記されている。
人類が進歩するに従って愛国心も大和魂もやはり進化すべきではないかと思う。砲煙弾雨の中に身命を賭して敵の陣営に突撃するのもたしかに貴い日本魂であるが、○国や△国よりも強い天然の強敵に対して平生から国民一致協力して適当な科学的対策を講ずるのもまた現代にふさわしい大和魂の進化の一相として期待してしかるべきことではないかと思われる。天災の起こった時に初めて大急ぎでそうした愛国心を発揮するのも結構であるが、昆虫や鳥獣でない二十世紀の科学的文明国民の愛国心の発露にはもう少しちがった、もう少し合理的な様式があってしかるべきではないかと思う次第である。


停電により携帯電話の充電もままならない。
電気・水道・情報も途絶え、いつ復旧するかもわからない中で過ごさなければならない人が数万人規模で存在する現実をどう理解すればよいのだろう。


天災と国防 (講談社学術文庫)
天災と国防 (講談社学術文庫)

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