二兎社公演 「ザ・空気」を観た

池袋西口の東京芸術劇場シアターイーストでの二兎社公演41「ザ・空気」を観た。
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永井愛の作・演出によるこの芝居は、番組放送の数時間前を中心に放送ジャーナリストたちの抵抗と挫折を時にユーモラスに、時にシリアスに描いたものである。

ほぼ一年前の2月8日、高市早苗総務大臣による国会答弁で、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返し、行政指導でも改善されたいと判断した場合、放送法4条違反を理由に電波法76条にも続いて電波停止を命じる可能性につき言及した。いわゆる「電波停止発言」である。

この発言に対してジャーナリストの池上彰氏は、『高市発言は、見事に効力を発揮しているようです。国が放送局に電波停止を命じることができる。まるで中国政府がやるようなことを平然と言ってのける大臣がいる。驚くべきことです。欧米の民主主義国なら、政権がひっくり返ってしまいかねない発言です。』と述べ痛烈に批判し、さらに『「特定の政治的見解に偏ることなく」「バランスのとれたもの」ということを判断するのは、誰か。総務相が判断するのです。総務相は政治家ですから、特定の政治的見解や信念を持っています。その人から見て「偏っている」と判断されたものは、本当に偏ったものなのか。疑義が出ます。』と至極まっとうな指摘をした。
池上氏は「政治的にバランス感覚がある」と評されるジャーナリストである。そんな彼がここまで苛烈に批判しているのは、安倍政権のメディア圧力がいかに常軌を逸しているかを示すひとつの証左といえるだろう。

加えて、「高市総務大臣「電波停止」発言に抗議する放送人の緊急アピール」と題した声明を出した。
その「呼びかけ人有志」は、ジャーナリストの田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏、岸井成格氏、田勢康弘氏、大谷昭宏氏、青木理氏、そしてTBS執行役員の金平茂紀氏である。

驚くべきことに、高市総務相は放送局全体で「公平」の判断を下すとしていた従来の政府見解を翻して、ひとつの番組だけを取り上げて停波命令を出すこともあり得ると示唆。
要するに、「少しでも政権や政策を批判する番組を流せば放送免許を取り上げるぞ」という露骨な恫喝を公言したのだった。

本作は上記のような一連の事実(ファクト)をふまえ、現代日本のジャーナリズムは、委縮、忖度、無自覚の罠に陥っていないかと、厳しく自他を問う批評の刃が研ぎ澄まされた作品に仕上がっていた。

編集長今森を田中哲司、キャスター来宮を若村麻由美、アンカー大雲を木場勝己、ディレクター丹下を江口のりこ、編集マン花田を大窪人衛の各氏が生き生きと熱演していた。

国境のない記者団が発表した報道の自由ランキングによると、日本は前年より11位落として72位とされている。
今また、「テロ対策」法案が国会で審議されている。
その成り行きをしっかりと注視していかなければならないと感じた。

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