「自由研究」に夢中

去る4月12日に「登戸研究所資料館」について記した。
私が白衣を着て試験管を振っていた場所が「第九陸軍技術研修所」であったこと、とりわけ秘密戦器材の研究にあたっていたということに心を揺さぶられた。

早速、関連書籍についてのリストアップとその蒐集にとりかかった。
絶版になっていたり、限られた図書館や施設でしか閲覧できないものが少なからずあることがわかったが、ネット時代の威力を最大限利用して5月5日現在、14冊の書籍を手にした。
写真はその一部を撮影したものである。

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絶版となってしまっている新刊本購入は不可能であっても、「中古本」の何冊かは思いのほか容易に入手することができた。
税込み6300円という高価なものもあったが、なかには「1円」のものもあり、新刊本なら2000円のものを送料込み
341円で「わが蔵書」とすることができた本もある。
とても有難いことではあるが、この「中古本」の価格はどのような基準で決められるのだろうか。
また貴重な書籍の「寿命」の短さにも驚いてしまう。
版を重ねるベストセラー以外、どんどん「抹殺」されていく出版界のありようにも疑問を感じる。
たとえ数百部しか売れない本であっても学問的な意味も含めて、大切に扱うべきなどではないだろうか。
ひいてはそれがこの国の文化レベルを下支えするものだと思うのだが・・・。
さらに、つくづく思うことは、私自身も含めてAmazonをはじめとする「ネット書店」での購入が増え(今年になって購入した書籍の8割は「ネット書店」である)、既存の「リアル書店」での購入は数年前に比べめっきり減っている。
「リアル書店」には当然その良さがあるのだが、現在のライフスタイルからすると、なかなかゆっくりと書棚を見て歩く時間がとれない。
お金と時間、簡便さが「リアル書店」の魅力に優先してしまっている。
今さらながら、出版業界、「リアル書店」の将来はとても厳しい状況にあると感じる。

さて、それはさておき「登戸研究所」である。
そもそもなぜこのような施設が作られたのか。
次の文章がその設立目的を明瞭に語っている。
(伴繁雄著 陸軍登戸研究の真実 芙蓉書房出版 2001年)
日露戦争のように第一線の武力戦によって行われた戦争形態は、第一次大戦から国家総力戦へと変わった。
武力だけでなく戦略、経済、思想など国力のすべてを挙げて戦争遂行するという総力戦型への転換である。
敵国内の国防要素を破壊し、国内に攪乱を醸成する手段で、より速やかに戦争目的を達成する目的のために、後方攪乱戦、情報獲得戦、宣伝戦の必要が生まれた。
これらを武力戦に対して秘密戦と呼んだ。
秘密戦は武力戦と併用または単独で行われる戦争手段で、戦争当時は、軍の諜報、防諜、謀略、宣伝的行為および措置を総称した。
秘密戦は、平和時にも戦時にも黒いベールのもとで行われ、その企図、行動、工作などは秘密保持を最も重要視した。
一国の参謀部、情報部、特務機関などの計画的な謀略や策動を基礎に、国の内外の組織が暗躍と隠密のうちに活躍したのである。
日本の陸軍が総力戦型への転換に着手したのは、第一次大戦直後であった。
大正十年、陸軍省は陸軍師団を縮小して装備の改善を始めた。
秘密戦中枢機関の設置、秘密戦要員の養成、また秘密戦のハードウエアとして科学的器材の研究整備が進められることになったのである。
秘密戦に用いられる器材は実に千差万別であり、科学的要素の巧妙な利用、応用を必要とする。
創造はその時代の科学の粋を集め、頂点を行くものでなければならない。
陸軍技術研究所の一つとして生まれた登戸研究所は、陸軍の秘密戦に必要な技術、器材の研究、生産機関であった。
発足当初からその存在、研究内容は高度の機密として守られた。
また、終戦末期まで実用化研究が続けられた「怪力電波」、本土決戦用兵器、遊撃部隊資材など研究内容は多岐にわたる。
戦後になって風船爆弾、経済工作の偽造紙幣など現物が残されたものから、はじめて語られるようになったのである。


具体的には秘密インキ、秘密通信用紙、超縮写真撮影装置(ライター型カメラ・鞄型カメラなど)、缶詰型爆弾、万年筆型破傷器、生物化学兵器、電波兵器(怪力電波=殺人光線)、風船爆弾、偽造紙幣、等々の研究開発・製造が行われていた。

軍事技術(今では宇宙開発技術といえるだろうか)の開発(端的にいえば「戦争」)が、科学技術を飛躍的に進歩させるものだということを、あらためて感じる。
軍・産・官・学が一体となって懸命に研究を進める。
研究の方向性や実用化にあたって、科学者自身が確たる倫理観を持つことの大切さにも思いを馳せる。
「時代」というものが、個々人の叡智というものを濫用・悪用させてしまうのだということも教訓として胸に刻まなければならないだろう。

いずれにせよ、かつての「科学少年」としては、殺人・殺戮ということを離れて、興味津々となる物ばかりである。
どのような原理でどのような効果をもたらすものなのか・・・、理化学事典や生物学事典、動物・植物生理学、農薬、微生物学、生化学のテキストなどを書棚から引っ張り出して調べている。
久しぶりに「学究の徒」となり、文字通り寝る間も惜しんでレポート用紙に書き連ねる。
「研究発表」やプレゼンテーションの予定など何もないのにパワーポイントでまとめてみたりもしている。
当分の間、私の「自由研究」は続きそうである。

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